ソニーのイヤモニが約8年ぶりに復活。ただしIER-M500はM7/M9の後継機ではない
ソニーが2026年8月28日、インイヤーモニター IER-M500 を発売します。オープン価格で、ソニーストア販売価格は19,800円(税込)。北米では $119.99。
「約8年ぶりのイヤモニ復活」と報じられていますが、これを IER-M7 / IER-M9 の後継機だと思って買うと、たぶん想像と違うものが届きます。設計思想がまったく別の製品です。
その違いを、発売前に整理しておきます。
まず全体像
| IER-M9 | IER-M7 | IER-M500 | |
|---|---|---|---|
| 発売 | 2018年10月6日 | 2018年10月6日 | 2026年8月28日 |
| 価格(税込) | 163,900円 | 103,400円 | 19,800円(ソニーストア) |
| ドライバー | BA 5基 | BA 4基 | 5mm ダイナミック 1基 |
| 位置づけ | フラッグシップ | 上位 | エントリー |
| 現在 | 終息 | 生産終了 | 新発売 |
価格は M7 の 約1/5。ドライバーは BA のマルチ構成から、ダイナミック1発へ。
同じ「IER-M」の名前が付いていますが、価格帯もドライバー方式も別物です。 M7/M9 のラインが2万円まで降りてきたのではなく、空いていたエントリー帯に新しく置かれた製品と見るのが正確です。
IER-M500 の仕様
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ドライバー | 新開発 5mm ダイナミック型 × 1 |
| インピーダンス | 16Ω |
| 音圧感度 | 103dB/mW |
| 質量 | 約6.9g(片側、ケーブル別) |
| ケーブル | 約1.6m・着脱式 |
| ハイレゾ | 対応 |
| カラー | ブラック / クリア / レッド&ブルー |
| 付属品 | ノイズアイソレーションイヤーピース(XS/S/M/L)、フィッティングサポーター(XS/S/M/L/XL)、クリップ、キャリングポーチ |
16Ω / 103dB/mW は鳴らしやすい部類です。スマホ直挿しやXperiaの3.5mmジャック、小型のドングルDACでも音量が取れる設計。ステージ用として、専用のアンプを前提にしていない構成になっています。
チューニングは、米国で20年以上ライブ音響と音楽制作に携わってきたモニターエンジニア、ノエル・エドワーズ氏との共同開発とされています。「ソニーが社内で作った廉価版」ではなく、現場の人間を入れて詰めた製品という位置づけです。
売りはドライバーではなく遮音
この製品で目を引くのは、ドライバーよりも遮音の作り込みのほうです。
ソニーは「高い遮音性」と「ステージ上での安定した装着感」を前面に出しています。そして付属品を見ると、その本気度が分かります。
- ノイズアイソレーションイヤーピース 4サイズ(XS / S / M / L)
- フィッティングサポーター 5サイズ(XS / S / M / L / XL)
合計9つのサイズが箱に入っている。これは「耳に合わせて密閉を詰めろ」という設計です。
イヤモニがステージで求められるのは、まず外音を遮ることです。爆音のモニタースピーカーとオーディエンスの歓声の中で、自分の演奏を聴き取らないといけない。電子式のノイズキャンセリングは遅延と音質変化を伴うので、ステージでは使えません。物理で塞ぐしかない。
ギズモードはこれを「無電源ノイキャン」と表現していました。バッテリーもプロセッサーも要らず、電池切れもしない。
そのほか、左右をコネクターの赤/青で識別できる、断線しにくいケーブル設計、防滴に配慮した構造と、現場で壊れないことに振った作りになっています。
ここが一般ユーザーにも効く理由
ステージ用の設計ですが、遮音性の高さは通勤・カフェ作業でもそのまま効きます。
ノイズキャンセリングイヤホンには「圧迫感」「耳が詰まる感じ」が苦手という層が一定数います。あれは逆位相の音を鳴らして打ち消す方式の副作用です。物理遮音にはそれがない代わりに、耳栓と同じ装着感になります。どちらが合うかは体質の問題なので、ここは好みが割れるところです。
同価格帯の有線イヤホンと何が違うか
2万円前後の有線イヤホンは激戦区です。SENNHEISER IE 200、final の E/A シリーズ、Shure SE シリーズ、中国系ブランドの多ドラ機など、選択肢は多い。
その中で IER-M500 の立ち位置は、こう整理できます。
| 観点 | IER-M500 の位置 |
|---|---|
| ドライバー数 | 1基。同価格帯には多ドラ機が多く、数では負ける |
| 遮音性 | 付属品の物量から見て、この価格帯では上位(サイズ9種) |
| 装着感 | ステージ前提=長時間・激しい動きでも落ちない設計 |
| 駆動 | 16Ω / 103dB/mW でスマホ直挿し可 |
| 耐久性 | 断線しにくいケーブル、防滴構造、着脱式 |
| 用途 | 演奏・配信・モニタリング寄り。リスニング特化ではない |
「ドライバーの数で選ぶ」層には刺さりません。 逆に「壊れにくく、外の音が入らず、スマホで鳴らせて、長時間つけていられる」を優先する人には、この構成は理にかなっています。
モニターイヤホンは原音に忠実であることが仕事なので、いわゆる「low が気持ちいい」「high がきらびやか」といった味付けは期待するものではありません。ここを取り違えると評価が食い違います。
誰が買うべきか
向いている
- 楽器を演奏する / 配信や録音でモニタリングをする
- Xperia など3.5mmジャックのある機種を使っていて、有線の選択肢を探している
- ノイズキャンセリングの圧迫感が苦手で、物理遮音が好み
- 充電が要らないイヤホンが欲しい
- ケーブル着脱式で長く使いたい
向いていない
- IER-M7 / M9 の後継機を期待している(別物です)
- ドライバー数やスペックの多さで満足したい
- ワイヤレスの利便性を捨てられない
- 味付けのある「楽しい音」を求めている
買うなら
発売日は2026年8月28日。カラーはブラック / クリア / レッド&ブルーの3色。
オープン価格なので実売は店によって動きますが、ソニーストアは10%オフクーポンと長期保証が使えるので、単純な最安値だけで比較しないほうがいい製品です。
付属品が9サイズ入っているとおり、この製品は装着が合うかどうかで評価が変わります。可能なら試聴できる店で耳に入れてから決めるのが確実です。
この記事の更新予定
- 発売後、実機レビューが出そろったら「実際どうだったか」を追記します
- 筆者が入手した場合は、遮音性の実測(騒音計での減衰量)を別記事にします
- M7 / M9 の中古相場との比較も追記予定
まとめ
- IER-M500 は M7 / M9 の後継ではない。価格1/5、BA 4〜5基 → 5mmダイナミック1基
- 空いていたエントリー帯に置かれた新しい製品と見るのが正確
- 売りはドライバーではなく遮音。イヤーピース類9サイズという物量がそれを示している
- 16Ω / 103dB/mW でスマホ直挿しできる
- モニター用途の設計なので、リスニング機として味付けを期待する製品ではない
繰り返しますが、筆者は実機を聴いていません。音の評価はレビューが出そろってから判断してください。この記事は「発売前に、何が違う製品なのかを取り違えないための整理」です。